性別変更の要件 最高裁の判断

戸籍上の性別変更は、2004年施行の性同一性障害特例法で可能となりました。戸籍上の性別変更について、現行の性同一性障害特例法に基づき、以下のように定められています。

 

一  二十歳以上であること。

二  現に婚姻をしていないこと。

三  現に未成年の子がいないこと。

四  生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。

五  その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

 

これらの要件を規定する性同一性障害特例法について、過去に最高裁で憲法違反かどうか争われ、このような判断が下されています。

 

生殖機能をなくす手術を受ける必要があるとする規定について、最高裁は2019年1月「変更前の性別の生殖機能によって、子どもが生まれると、社会に混乱が生じかねないことなどへの配慮に基づくものだ」として憲法に違反しないとする初めての判断を示しました。

 

また、2021年3月には結婚に関する規定について「異性の間だけで結婚が認められている現在の婚姻秩序を混乱させないように配慮したもので、合理性に欠くとはいえない」として、憲法に違反しないと判断しました。

 

今回争われた「未成年の子どもがいないこと」という規定は、2004年に法律が施行されたときには「子どもがいないこと」と規定されていましたが、子どもが成人した場合には性別を変更できるよう、2008年の法改正で緩和されました。

当事者は前の妻との間に現在10歳の子どもがいる兵庫県に住む性同一性障害の54歳の会社員。性別を適合させるための手術を受けたあと、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう裁判所に求めました。

性同一性障害特例法で戸籍上の性別を変えるには「未成年の子どもがいないこと」と規定されているのは憲法違反だと主張しましたが、認められず、最高裁判所に抗告していました。

 

改正前の規定については、最高裁が2007年に「子どもがいる人の性別変更を認めると、家族の秩序を混乱させ、子どもの福祉の観点からも問題が生じかねないという配慮に基づくもので、合理性を欠くとはいえない」として、憲法違反ではないとする判断を示していました。

今回はこの考え方を踏襲し、裁判官5人のうち4人の憲法に違反しないことは明らかだという多数意見により、「未成年の子どもがいないこと規定は「合憲」との初判断を示し、戸籍の性別を女性に変更するよう求めた当事者の特別抗告を棄却しました。