成人年齢の引き下げ 相続や贈与に及ぼす影響

明治9年の太政官布告から今日まで約140年間、日本での成年年齢は20歳と民法で定められていました。この民法が改正され、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

 

2022年4月1日以降、18歳や19歳の人は、新成人となり親権者の同意を得ずに一人で有効な法律行為が行えるようになります。

 

成人年齢の引き下げは、相続や贈与にも影響を与えます。

『18歳や19歳でも遺産分割協議に単独で参加できる』

遺産分割協議は法律行為のひとつなので、これまで18歳19歳の未成年者は単独で遺産分割協議に参加することができませんでした。

通常は法定代理人である親権者が本人を代理して遺産分割協議に参加することになりますが、ほとんどの場合、未成年者である子とその親権者で利益が相反することになり、親権者は利害関係のない者を特別代理人として選任することを家庭裁判所に請求しなくてはなりませんでした。

今後は、18歳や19歳でも遺産分割協議に単独で参加することができるので、親権者の同伴や特別代理人の選任申立ては不要になります。

 

『相続税の未成年者控除額の縮小』

相続税の計算においては、相続又は遺贈により財産を取得した者が未成年である場合には、算出相続税額から一定額の控除を受けられる「未成年者控除」という制度があります。

以前は20歳に達するまでの年数につき10万円を乗じて計算した金額が相続税額から控除されましたが、これが令和4年4月1日以後開始の相続から成人年齢の引き下げによって、この控除の上限額が縮小されます。

 

【2022年4月1日以降の相続分の未成年者控除の控除上限額】

(18歳-相続や遺贈で財産を取得したときの年齢(※))×10万円

 

※これまでの計算式

【2022年4月1日以降の相続分の未成年者控除の控除上限額】

(18歳-相続や遺贈で財産を取得したときの年齢(※))×10万円

 

『贈与されたときの税率が下がる』

【暦年課税制度】

1年間に贈与された財産の合計額が110万円を超えると課税される「暦年課税制度」。

この制度で計算する贈与税の税率には「特例税率」と「一般税率」の2つがあります。特例税率とは、贈与年の1月1日において20歳以上の者が父母や祖父母などの直系尊属から受けた贈与財産に適用される税率で、一般税率に比べて税負担が軽くなるよう設定されています。

 

そして、今回の改正により、令和4年4月1日以後の贈与については、この特例税率の適用年齢が贈与年の1月1日において18歳以上に変更されます。

 

【相続時精算課税制度】

相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。令和4年4月1日以後の贈与については、受贈者の年齢要件が18歳以上とされますので、従来よりも2年早くこの制度を使うことができるようになります。