相続の承認

◇単純承認の種類及び効果
☆単純承認の種類
①意思表示による単純承認
法定単純承認のほかに、相続人が積極的に意思表示をすることによって成立する法律行為としての単純承認というものが果たして存在しうるのかどうかについては争いがあるが、判例はこれを肯定する。
②法定単純承認
積極的な単純承認の意志表示がなされたわけではないが第三者からみれば単純承認があったと思われるような一定の行為をしたときには、相続人は単純をしたものとみなされる。
☆単純承認の効果
無限に被相続人の権利義務を承継する。

◇法定単純承認事由
☆相続財産の処分
相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき
→ただし保存行為や短期賃貸借は除かれる

☆相続財産の処分
①処分とは限定承認又は放棄をする以前の処分に限られる。
②相続人が相続財産である金銭債権を取り立ててこれを消費する行為は法定単純承認事由である「相続財産の一部を処分したとき」に該当する。
③法定単純承認事由である「相続財産の処分」は相続人が被相続人の死亡の事実を知った後か確実に死亡を予想しながらしたものでなければならない。
④未成年である相続人の親権者が相続財産である建物を売却した時はその相続人は単純承認をしたものとみなされる。
⑤「処分」には法律的処分だけでなく事実的処分も含む。
→放火は処分にあたる(失火や過失で滅失させた場合は含まない)
⑥保存行為・短期賃貸借は含まない。
短期賃貸借は管理行為に該当するが相続財産の管理人としての立場があるから、その行為をもって単純承認とすることはできない。
※「保存行為」:修繕・時効の中断・不法登記の抹消請求
⑦未成年である相続人の親権者が相続財産を処分した場合
→その未成年者である相続人は単純承認したものとみなされる。
※相続人が未成年者である場合は相続財産の処分の有無は法定代理人について判断する。
⑧一部について処分があれば他の相続財産についても放棄はできない。
 
◇考慮期間の徒過
相続人が民法915条1項の考慮期間内に限定承認又は放棄をしなかったときは
単純承認をしたものとみなされる。

◇限定承認・放棄後の相続財産の隠匿など
相続人が限定承認又は放棄をした後に相続財産の全部または一部を隠匿し、私に(自分勝手に欲しいままに)消費し、悪意で財産目録にしなかった時は、原則として単純承認をしたものとみなされる。
※「財産目録」:相続人が限定承認する場合に債務の引当てとなるべき財産の範囲を明確にしておくために作成するべきもの
積極財産だけでなく、消極財産を記載しなかった場合も適用あり。