認知症などで判断能力が十分でない人に代わり、家庭裁判所が選任した親族や弁護士等がその人の財産を管理する成年後見制度。
しかし近年、後見人による財産の使い込み、横領が相次ぎ社会問題化しています。
元弁護士の男が、成年後見人として管理していた認知症の女性の口座から預金を着服したとして、警視庁に逮捕されたことも記憶に新しいと思います。
こうした後見人の不正行為を防ぐため、平成24年からは後見制度支援信託という新たな制度がつくられています。
同制度は、管理する財産を信託銀行に信託し、その払い戻しや解約に家庭裁判所の「指示書」を必要とすることで後見人の不正を未然に防ごうというものです。
なお、信託財産は元本が保証され、預金保険制度の保護対象になりますが、信託することができる財産は金銭に限られるので、不動産等を信託することはできません。
また、信託銀行のほとんどが最低1000万円からの利用を前提にしているので、実際には本人に1000万円以上の預貯金がある場合が対象となります。
そもそも地方では信託銀行が少ないという事情もあり、簡単に利用できるとはいえません。
こうした問題点を踏まえて、地方の銀行・信用金庫では、政府が後見支援信託に並立・代替する新たな方策を金融機関団体や各金融機関において積極的に検討することが期待されていることに鑑み、「後見支援預金」の取り扱いが始まっています。
その仕組みは、預金の引き出し、解約等に家庭裁判所の指示書を必要とすることで不正使用を防ぐ従来の仕組みを踏襲するものだが、最低預入単位の制限はなく、手続きも弁護士や司法書士などの専門職の選任を必要としないケースも有り得るといいます。
このように成年被後見人の預金を金融機関と家庭裁判所とが連携して管理することで安全性と利便性が高まることが期待されています。
※「後見支援預金」の商品概要については取り扱いをしている金融機関により異なりますので、ご注意ください。