意外に難しい(?)自筆証書遺言(その2)

自筆証書遺言は法律のプロが関与しなくても自分一人で手軽に作成できることから、毎年の元日に遺言書を書くという方もいらっしゃるそうです。

自筆証書遺言は、「遺言の内容」「日付」「氏名」を「手書き」して「押印」すれば完成ですが、これらの要件について相続人の間で争いが少なくないことは前回紹介したとおりです。

前回は遺言書そのものが有効か無効かという話題でしたが、今回は、遺言書の形式的な要件は満たした上で実際の中身である「遺言の内容」について見てみます。

自分の財産をどのようにするのかを書く場合、「相続」または「遺贈」と書きます。
遺産となる財産として不動産と株式を保有している場合
・不動産を妻に相続させる
・株式を世話になったAに遺贈する
このようになります。

上記の例では「相続」と「遺贈」を意識的に使い分けました。
それでは
・不動産を妻に遺贈する
・株式を友人Aに相続させる
という記載がされている場合はどうなるでしょう。

「遺贈」とは財産を無償で与えることであり、その相手は相続人はもちろん赤の他人でもいいですし、法人でもかまいません。よって「不動産を妻に遺贈する」という記載はそのまま「遺贈」として扱われます。

一方、「相続」は相続人となる者が民法で定義されており、赤の他人や法人が相続人になる事はありません。
それでは、「株式を友人Aに相続させる」という記載は無効となってしまうのでしょうか。

判例では、遺言者の意思を汲み取って遺贈として扱うことができるとされた事例と、遺贈として扱うことはできないと判断された事例があります。

遺言書では誰に相続させるのか、誰に遺贈するのかは慎重に検討する必要があるのです。