近年、少子高齢化社会の進行から、おひとり様の老後・終活・リタイアメントプランなどが注目されており、私たちしあわせ遺産相続の専門家にも多くのご相談を頂戴しております。
今回、おひとり様が老後を快適に暮らすためのポイントを挙げてみたいと思います。
まず、総論的な視点になりますが、「夫婦で」「ひとりで」「子に頼らない」幸せな老後を築くには以下の3つの自立要素(自営要素)が必要となります。
年配の夫婦や独りで幸せな生活を送りたい場合、若い世代と異なり、体力的自立要素(健康力・活動力)の低下は避けて通れない要素になります。その低下する体力的自立要素を補いつつ、満足な老後を送ることを考えると、他の3つの自立要素を充足させるよう考慮する必要があるのです。
3つの自立要素
①法的自立要素
高齢化により体力的自立要素が低下し、独力では自立して社会活動ができない場合、自立して生活できるように法的体制を充実させ、自立して社会で必要なサポートを受けられるよう準備する必要があります。
どのような法的体制を構築するかは、本人の年齢・健康状態・収入・支出・保有財産・居住エリア・現在のライフスタイル・将来のご希望などを総合的に勘案し、下記例に挙げられる法的手段を複合的に組み合わせることになります。
(例)
[財産管理契約]
高齢により足が不自由になるなど外出が厳しい場合、子などが日常の生活費の支払いを代行することが多いものですが、財産管理契約により他者に財産管理を委託し、日常の生活費の支払い、銀行の入出金、それらに伴う通帳やキャッシュカードの管理、場合により介護施設入所・病院入院の契約や費用の支払いなど、生活に必要な事項を他者に代行させることで子などから自立して生活を行うことができます。
[銀行代理人登録]
上記の『財産管理契約』と類似しますが、銀行にあらかじめ代理人を登録することで、本人以外にも、登録された代理人により出金することができます。
但し、一般的には2親等以内の親族などの制限があるため、子などから自立して生活をするには配偶者が代理人となります。
[任意後見契約]
高齢化に伴う認知症の発症などにより物事の認識能力が低下し、日常生活が困難となる場合、子などが家庭裁判所から後見人に指定されることが多いものですが、健常なうちに、他者を任意後見人と指定する任意後見契約を締結し、認知症などの発症の際は、生活すべてに関わる財産管理を任意後見人の管理をすることで、日常生活が困難になった際も、子から自立して生活を行うことができます。
[民事信託契約] https://ls-shintaku.com/#info1-1
特定の財産を、用途を定めて他者に管理・運用を信託(委託)する方法を『民事信託契約(家族信託契約)』と言います。例えば、「○○に自宅不動産の管理・運用を信託するが、健常なうちは私が自宅に住む。将来認知症になって老人ホームに住んだら売却し、売却金は毎月の介護費用に充てる。その条件で私が亡くなるまで不動産管理と売却処分と売却後の代金管理を信託する」のように、用途を定めて誰かに民事信託契約をします。このように民事信託契約をすることで、仮に将来認知症になってもあらかじめ自身が希望していた通りの運用が可能となります。
[預金信託]
上記の『民事信託契約(家族信託契約)』の一形態で、信託銀行などで、預金口座に限定して、用途を定めて銀行に管理・運用を信託(委託)するサービスが開始しています。例えば、「〇〇銀行に預金した〇〇口座は、将来本人が認知症になっても〇〇(一般に親族か士業専門家)の請求を条件に、毎月の介護施設費用や生活費に限って出金・支払いできる」のように、用途を定めて銀行と民事信託契約を締結します。仮に将来認知症になっても銀行があらかじめ指定されたとおりの運用を行います。
[死後事務委任契約]
死亡した際、一般的には相続人や親族が、葬儀・埋葬や生前の未払い金清算などの手配を行うことが通常ですが、生前のうちに死後事務委任契約を締結し、あらかじめ他者に葬儀・埋葬や生前の未払い金清算などの手配を委託することで、相続人や親族を介せずにそれらの手続きが可能です。
[遺言書] https://ls-yuigon.com/
死亡した際、自身の財産の行方を自身で決定できる方法が『遺言書』です。一般的には遺産分割協議を行い相続人全員の合意で遺産の行方を決める、または、法定相続割合に応じて遺産の所属割合が決まるものですが、本人の意志で自身の遺産の行方を決められる唯一の方法が遺言書の作成になります。
自筆で記載する自筆証書遺言書。公証役場で公証人が作成する公正証書遺言書があります。
②経済的自立要素
高齢化により体力的自立要素が低下し、独力では収入(給料・商売収入など)を得ることが難しくなるものです、この場合、老後も自立して生活収支が成り立つように経済的自立要素を確認する必要があります。
当然ながら年金収入と保有資産による収入を検討することが多くなります。
[公的年金]
国民年金・厚生年金の他、障害者年金・国民年金基金や恩給など各種年金制度を確認し、将来に渡る収入予定を想定します。夫婦の場合、遺族年金に移行する場合もあるので、死亡の時期によって移行する場合、移行しない場合の想定も行い、収入の将来像を検討することになります。
[個人年金]
個人年金は、あらかじめ一定金額を保険会社に積立払や一括払を行い、高齢になった際に月払いや年払いで分割して保険会社から分配金が支払われる契約です。存命中に支払われるもので、死亡の際に支払いが終了する契約、死亡後も一定期間相続人に支払いが継続される契約があります。
個人年金の証券や年末に送付される保険会社からの加入のお知らせなどを確認し、将来の収入を想定する必要があります。
[持ち家]
持ち家の有無は重要な検討要素です。持ち家保有の場合は、概算の換価価値を計算し、保有をしたまま持ち家で生活した場合、介護施設に転居して持ち家の売却金で介護施設費用を支払った場合などの収支を比較検討することになります。
なお、持ち家でも住宅ローンがある場合は、売却金からローン金額を返済し、残った金額で収支を検討することになります。
また、持ち家ではない場合、毎月の生活支出に家賃や介護施設費用を計上する必要があります。
[収益性不動産]
賃貸アパート・賃貸マンション・貸家保有など収益性不動産を所有している場合、賃料収入と維持経費(固定資産税・管理費・修繕費)から不動産の収支状況を把握し、空室率や将来的な建物劣化による賃料下落率などを想定して本人全体の収支に組み入れることになります。
また、賃貸を続けずに売却換価した場合の金額も想定し、賃貸継続の場合と売却をした場合の有効性を比較検討することになります。
[収益性金融資産]
株式や投資信託など配当のある有価証券(収益性金融資産)も収益性不動産と同様に、保有を続けて配当を受領した場合の収入と、売却換価した場合の金額を想定し、それぞれ比較検討することになります。
[リバースモーゲージ]
持ち家を担保に、銀行から生活資金を借り入れ、死亡後に持ち家を売却して借入金を返済する制度をリバースモーゲージといいます。借入金を返済するのが死亡後になり、存命時には返済をしなくていいため(利息のみ支払う場合もあり)、死亡後の遺産分配のことは考えなくても良いのが利点です。
ただし、借入金額は持ち家の担保評価によって上下するので、希望通りの借入額になるとは限らないため将来の収支を慎重に検討し、借入金で生活が賄えるのか検討する必要があります。
③精神的自立要素
「夫婦で」「ひとりで」幸せな老後を築く。
とても大切なことですし、その正解は一人一人の心の中にあります。
心の中に何もなければ、いかに経済的に満たされていても、いかに法的準備をきちんとしていても、決して幸せな老後にはならないのです。
日々の生活で、いかに自身の人生の幸せを心に描くかが重要と言えます。
[コミュニティー]
日々の生活で、心のよりどころとなる満ち足りたコミュニティーはありますか。
(正解は人それぞれです)
[生きがい]
日々の生活で、自身の生きがいをもって生活しておりますか。
(正解は人それぞれです)
[生き方]
今は人生の集大成。今とこれから。人として納得の生き方ですか。
(正解は人それぞれです)
[死生観]
生まれたときから人という存在は死に向かっています。人生の終わりをどう迎えますか。
(正解は人それぞれです)
[世界観]
また生まれ、また死を迎える『人』という存在が在るこの世界を、人生の最終盤にどう位置付けますか。
(正解は人それぞれです)
私たちしあわせ遺産相続の専門家は、老後のおひとり様のサポートも積極的に行っております。お気軽にご相談ください。