相続不動産を売却するための遺産分割協議書3例

近年、相続不動産をご売却されたいご相談が多く寄せられております。
その場合、まずは相続登記を行う必要がございますが、売却するための遺産分割協議書にはいくつか方法がございますのでご紹介します。

 

1.売却金を取得する相続人全員名義に相続登記をする通常の遺産分割協議書

まず、一般的な遺産分割協議書が、売却金を取得する相続人全員名義に相続登記をする遺産分割協議書です。

例えば、売却金を相続人Aさんが40%・Bさんが60%取得することにした場合、遺産分割協議書には「不動産をA40%・B60%取得する」と定め、そのとおりに相続登記を行います。

相続登記により、Aさんが40%・Bさんが60%と登記名義が変更され、その後、売却時はAさん・Bさんが共同して売却の手続きを行い、売却金は40%・60%の割合で分配されることになります。

なお、相続登記・売却諸費用・譲渡所得税などの諸経費も40%・60%の割合で負担することになります。

また、売却の手続きは、Aさん・Bさんが共同して行う必要があるため、どちらかが反対すると売却ができないことになるので注意が必要です。

 

2.代表者1名のみに相続登記をする遺産分割協議書(換価分割)

次に、売却して売却金を指定の割合で分配することを条件に代表者1名のみに相続登記をする遺産分割協議書もございます。

こちらを「換価分割」の遺産分割協議書と言います。

前段の例と同じく、売却金を相続人Aさんが40%・Bさんが60%取得することにした場合、遺産分割協議書には「不動産はAが取得するが、売却を行い、売却金をA40%・B60%で分配する」と定め、A名義に相続登記を行います。

相続登記により、Aさんに登記名義が変更され、その後、売却時はAさんが単独で売却の手続きを行い、売却金はAさん40%・Bさん60%の割合で分配されることになります。

なお、登記名義はAさん単独にも関わらず、相続登記・売却諸費用・譲渡所得税などの諸経費は40%・60%の割合で負担することになります(特に譲渡所得税はBさんも申告を行う必要があるためご注意ください)。

 

3.1名に相続登記を行う代わりに定額金を支払う遺産分割協議書(代償分割)

最後に、誰か1名に相続登記を行う代わりに、他の者に定額金を支払う遺産分割協議書がございます。

こちらを「代償分割」の遺産分割協議書と言います。

前段の例と少し異なりますが、相続人Aさんに相続登記を行う代わりに、AさんからBさんに1000万円を支払うことにした場合、遺産分割協議書には「不動産はAが取得する。ただし、代償金としてAがBに1000万円を支払う」と定め、A名義に相続登記を行います。

相続登記により、Aさんに登記名義が変更され、その後、売却時はAさんが単独で売却の手続きを行い、売却金はAさんが全額取得します。

ただし、遺産分割協議書に記載のとおり、AさんからBさんに1000万円が支払われることになります。

この場合、相続登記・売却諸費用・譲渡所得税などの諸経費はAさん単独で負担することになります(換価分割と異なりBさんは譲渡所得税の申告を行う必要はありません)。Aさんの費用負担をあらかじめ考慮して、Bさんへの支払額を決定する必要があり注意が必要です。

 

このように、通常の遺産分割協議書・換価分割の遺産分割協議書・代償分割の遺産分割協議書と、3つの遺産分割協議書はそれぞれ特色がありますので、相続や売却の諸事情を考慮してどの遺産分割協議を行うか選択する必要がございます。

司法書士は売却不動産・換価分割・代償分割の相続登記のご相談を多くお受けしております。お気軽に司法書士・行政書士にご相談ください。