大昔の抵当権が残っている場合の対処法

代々相続している不動産では時折、不動産登記簿に「明治〇年〇月〇日設定 債権額金100円」等の抵当権が設定されていることがあります。
通常、抵当権を抹消するには、抵当権者と所有権者が協力し、法務局に抵当権抹消登記を申請するのが原則ですが、明治の頃の抵当権者の所在など分からないため、困り果ててご相談にいらっしゃる方も少なくありません。

このような抵当権登記を「休眠担保権」と呼ぶのですが、抹消登記をする方法がいくつかございます。

1.抵当権者の相続人を探す方法
代々受け継いでいる不動産の場合、大昔の抵当権者も近隣の方である場合もございます。
この場合、抵当権者の相続人も近隣に居住している場合がありますので、協力を打診し、原則通り抵当権者(の相続人)と所有権者で抵当権抹消登記を申請することが可能です。
ただし、抵当権者の相続人全員から協力を得ることが必要なため、非協力の相続人がいる場合は進めることができません。

2.供託を行う方法
抵当権者が所在不明の場合で、弁済期から20年を経過している場合、元金・遅延利息の全額を法務局に供託をした場合、所有権者の単独で抵当権抹消登記を行うことができます。
これは登記簿の記載が「債権額100円」など、現在の貨幣価値では低額に類する抵当権の場合に有効な方法となります。

3.抵当権者が30年以上前に解散した法人の場合の方法
抵当権者が30年以上前に解散した法人で、弁済期から30年以上経過している抵当権について、 抵当権者の法人の清算人の所在が判明しない場合は、所有権者の単独で抵当権抹消登記を行うことができます。但し、抵当権を設定した際の融資契約書などで弁済期から30年以上経過していることを証明する必要があるため、一定の資料が必要となります。

4.弁済証書などを提出する方法
抵当権者が所在不明の場合で、当時の弁済証書など負債を完済した書類が手元にある場合、それらを法務局に提出することで、所有権者が単独で抵当権抹消登記を行うことができます。

5.裁判所で除権決定を得る方法
抵当権者が所在不明で、完済済・時効など抵当権の消滅を証明することができる場合、裁判所に公示催告の申立てを行い、除権決定を取得すれば、所有権者の単独で抵当権抹消登記が可能です。

6.訴訟提起を行う方法
抵当権者(相続人含む)が判明しているが、その方が非協力などの場合、時効などを理由として裁判所に抵当権抹消登記請求訴訟を提起し、判決により抵当権抹消登記を行う方法です。

以上のとおり、「休眠担保権」を抹消する方法は、状況に応じて適した選択肢がございます。
まずはお気軽に司法書士までご相談下さい。