不動産の死因贈与契約の手続きと、死因贈与の実行手続きについて

遺言(遺贈)と並び、死因贈与の手続きは、遺産を確実に承継するための有効な手段です。

今回は、その死因贈与の手続きについて解説します。

 

1.死因贈与契約の利点

死因贈与契約とは、贈与者が死亡したときに効力が生じる贈与契約のことです。
遺言者が一人で遺言書を作成する「遺贈(遺言による贈与)」に似ていますが、死因贈与契約は贈与者(あげる人)・受贈者(受け取る人)の両名の合意で成立します。

死因贈与契約の最大の利点は、不動産の死因贈与の場合に「仮登記」ができることです。遺贈の場合は遺言書の書き換えや紛失などで比較的簡単に効力を失う可能性がありますが、死因贈与契約の場合、不動産登記簿に仮登記をすることで、公に権利保護を図ることができます。

 

2.死因贈与契約の締結

死因贈与契約は、贈与者・受贈者の両名の合意で成立します。

通常は、死因贈与契約書を作成し、お互い署名の上、捺印を行います。不動産の死因贈与契約の場合、契約書条項で死因贈与執行者を指定し、贈与者の実印を捺印のうえ、印鑑証明書を保管しましょう(死因贈与の実行手続きに際に役に立ちます)。

また、公正証書で死因贈与契約を作成することも有効です(死因贈与の実行手続きに際に役に立ちます)。その場合、贈与者が仮登記をすることを承諾する条項を記載しましょう(仮登記の際に役に立ちます)。

 

3.死因贈与の仮登記

不動産の死因贈与契約成立後、贈与者・受贈者は、法務局に「死因贈与の仮登記」を申請することができます。

その際の必要書類は以下のとおりです。

(1)通常の場合
・死因贈与契約書
・贈与者の印鑑証明書
・不動産の評価証明書

(2)公正証書の死因贈与契約書がある場合
・死因贈与契約公正証書
・不動産の評価証明書
(贈与者の印鑑証明書が不要となります)

※登記申請は司法書士に依頼すると簡便です。

 

4.死因贈与の実行手続き

贈与者が他界した後、死因贈与の実行手続きとなります。
受贈者が贈与を実現するためには以下の手続きが必要です。

(1)書類準備
以下の書類を準備しましょう。

※共通で必要なもの
・死因贈与契約書
・贈与者の死亡の記載のある戸籍謄本・住民票
・受贈者の住民票
・不動産の権利証、登記識別情報通知
・不動産の評価証明書

※死因贈与契約書が公正証書の場合で死因贈与執行者が定められている場合
・死因贈与執行者の印鑑証明書

※死因贈与契約書が公正証書でない場合で死因贈与執行者が定められている場合
・贈与者の契約当時の印鑑証明書
または、家庭裁判所による死因贈与執行者の選任審判書
・死因贈与執行者の印鑑証明書

※死因贈与契約書に死因贈与執行者が定められていない場合
・贈与者の出生から死亡までの戸籍謄本
・法定相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書
または家庭裁判所による死因贈与執行者の選任審判書、印鑑証明書

(2)死因贈与登記
前記の書類により、不動産の管轄法務局にて所有権移転登記(場合により仮登記の本登記)を行います。

※登記申請は司法書士に依頼すると簡便です。

 

5.法定相続人への通知

死因贈与執行者は、遺言執行者同様に法定相続人へ通知を行い、遺留分侵害額請求(法定相続分の50%相当額の金銭を請求すること)の機会を与える必要があります。

 

6.相続税の申告

死因贈与で受領した財産は、相続税の課税対象となります。贈与者の遺産が相続税の課税対象となる場合、受贈者は相続税の申告期限内(10か月内)に相続税を申告する必要があります。配偶者や子以外が受贈者の場合は相続税が2割加算の可能性に注意しましょう。

 

しあわせほうむの司法書士・行政書士・税理士は、不動産の死因贈与契約のご相談・作成・仮登記から、死因贈与の実行・税務申告まで、さまざまなお手伝いをさせていただいております。

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