遺言書を残すことの大切さ:次世代に揉め事を残さないために

自身が死亡した後の自身の財産の行方を、自身で決めるほぼ唯一の方法が遺言と言えます。遺言のような手段を何も講じなかった場合、相続人全員での遺産分割協議や家庭裁判所の調停・審判によるか、民法に定められた法定相続割合により遺産の行方が決まってしまうため、必ずしも自身が望んだとおりの遺産分けにならないことは少なくありませんし、それどころか大ごとになることも見受けられます。

 

[残った子による解決まで15年]

とある父・母・子2人の4人家族の事例。

何十年も音信不通の子がおり、普段父母の面倒を見てくれるもうひとりの子に財産を渡したいといつも話していたものでしたが遺言書は残しておりませんでした。

しかし、父が亡くなったとたん、どこから聞きつけたのか突然音信不通の子が実家に現れたかと思うと、ご遺体の前には行かずに真っすぐ金庫に向かい「金庫を開けろ!この家の家督を継ぐのは自分だから財産書類は全て自分に渡せ!」と怒鳴りだしたのでした。

父はもうひとりの子に財産を引き継いでもらいたいと生前話していましたが、遺言書は残していなかったため、相続人の遺産分割協議により遺産の行方を決める必要があります。しかし、音信不通だった子が障害となり、いつまで経ってもまとまることはありません。

何年経っても遺産分割協議はまとまらず、父の遺産は手つかずのまま…。この状況に仕方なく、母はもう一人の子に全ての遺産を渡す旨の遺言書を作成しました。

その後、母も他界。子2人のみが遺された状況になって、ようやく家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、家庭裁判所の判断により遺産承継が終わりました。しかし、全て終わった時点では、父が他界してから既に15年を過ぎていました。

父の財産の行方を明確にする遺言書さえあれば、このようなことにならなかったのは言うまでもありません。

自身の財産の行方を自身で決める遺言書などはなるべく作成しておくべきでしょう。

 

[相続権のない配偶者が大騒ぎ]

とある父・娘4人の事例。

母は先に他界しており、相続財産を有していた父が亡くなりました。

娘4人は他家に嫁いでいることもあり、生前より、(遺言書は無いものの)父も娘4人も、父の他界後は実家も株も全てお金に換えて均等に分けようと話していたものでした。

父の葬儀・納骨・四十九日が終わり、さて遺産分けを始めよう、と娘4人が集まった時、長女の夫がその席に割り込み「ウチが家督を継ぐべきだから娘婿の私が遺産分けの内容を全て決める!」と言い出したのでした。

他の3人の娘は突然の話に驚き、長女に対し「何言ってるの?4人で均等に分けるって決まってたじゃない?」と話しかけますが、長女は俯いたまま一言も発せず。それに対し夫は「私が娘婿なので嫁に決定権などはない!私が決めるのだ!」と大声を張り上げて他の娘たちを威嚇するのでした。

相続人たる娘4人の遺産分割協議により遺産の行方を決める必要があるため、夫に決定権などありません。当然ながら他の娘3人は全員反対を唱え、遺産分割協議が進むことなく3年が経過した頃、他の娘3人と夫との板挟みの心労たたり、長女は倒れてしまうのでした。

今まで私たち専門家の意見にも耳を貸さず他の3人の娘に大幅な譲歩を要求していた夫でしたが、長女が倒れたことにより、夫の法的に通らない要求が妻にとんでもな苦労をさせていたことを思い知るに至り、その後は一切意見を言うことは無くなり、無事に父と娘4人が生前に取り決めていたとおりの遺産分割を行うことができたのでした。

このように、父やその相続人間で円満に取り決めができていたとしても、「相続人の配偶者」が横車を押すことは珍しくありません(相続トラブルの定番と言えます)。

たとえ実の相続人が円満であったとしてもこのような事態は起こります。もし遺言書があったらトラブルなく遺産分けが終わったし、4人の娘も円満もままであったと考えざるを得ません。

 

これらの事例は「遺言書さえ残していれば」という事例です。自身が死亡した後の自身の財産の行方を、自身で決めるほぼ唯一の方法が遺言と言えます。多くの遺言相談を取り扱う私たちしあわせ遺産相続の専門家にお気軽にご相談ください。