代償分割とは、例えば法定相続人は複数人いるが、不動産の全てを相続人の1人が取得する代償として、他の相続人に対して代償金を支払い相続人間の均衡を図る遺産分割方法です。以下、事例を使ってメリットとデメリットを説明します。
~事例~
<遺産の内訳>
土地1筆(4,500万円相当)
建物1棟(1,500万円相当)
<法定相続人>
長男、二男、三男(各法定相続分3分の1)
<分割方法>
上記土地建物を長男が全て取得して、その代償金として二男、三男に各2,000万円を支払う。
上記事例のケースが典型的な代償分割と言えますが、メリットとしては以下のような事が考えられます。
・他の相続人に不動産を継がせることなく特定の相続人が取得できる。
・遺産を分割しないで全て取得できる。
・ケースにより相続税の節税ができる可能性がある。
反対に、デメリットとしては以下のような事が考えられます。
・法定相続人全員に代償金について納得してもらわないと手続きが出来ない。
・不動産を全て取得した相続人は、代償金の支払いが金銭的に大きな負担となる。
・不動産を取得した相続人から代償金が支払われない場合、再び遺産分割協議を行うことは困難であり、支払いを求める訴訟に発展してしまうおそれがある。
このように、不動産等の遺産を全て取得したい相続人がいる場合には、有効な分割方法であると言えます。
ただし、不動産を取得した相続人がその不動産を売却した場合の譲渡所得税の計算に関しては、最大の注意を要します。判例上、代償分割の支払代償金は譲渡所得の金額の計算上の取得費に当たらないとされているからです。
上記の事例で、長男が二男、三男に対して各2,000万円を支払い、土地建物を6,000万円で売却したが、仮に取得費が不明の場合、取得費は売却価格の5%で計算されるので300万円となります。そして譲渡所得の課税価格は6,000万円-300万円=5,700万円となり、これが仮に短期譲渡所得に該当すれば、最大39.63%の税金がかかりますので、税額は2,258万9,100円となってしまいます。長男1人でこれを負担する事になるので、長男は赤字になってしまします。代償金額の提案は長男側がするケースが多いでしょうから、長男にとっては最悪の状況となるでしょう。
代償金を計算するには、ここまで見越していないといけないという事です。
換価分割と代償分割の有効性の判断には専門的な知識を要しますので、特にこのような手持ちの資金で代償金を支払えないようなケースであれば、事前に信頼できる専門家に『換価分割と代償分割のどちらを選択すべきか』を相談される事をお勧めします。
なお、譲渡所得につき、マイホームを売ったときの特例に該当する場合には、この特例を受ける事は可能です。