再転相続と相続放棄について

再転相続と相続放棄について

再転相続とは、相続人が相続放棄の熟慮期間中に、相続の承認または放棄を行わないまま死亡してしまった場合に、その死亡した者の相続人が、前相続人の承認・放棄する権利を承継取得することをいいます。

例えば、このようなイメージになります。
①叔父:死亡。父が相続人となる。
②父:叔父の相続人となり、相続を承認するか放棄するかを検討中に死亡。
③本人:父の相続人であり、叔父の相続人となる。

この場合、本人は叔父と父の両方の相続人になり、叔父の相続に関しては、父が行わなかった相続を“承認か放棄を選択する権利”を相続することになります。
しかし、父の相続は承認したいが、叔父の相続についてだけ相続放棄することができるのかどうかが問題となります。

結論は、叔父の相続分を放棄し、父の相続分を承認することができますが、逆に、叔父の相続分を承認し、父の相続分を放棄することはできません。
これは、父の相続分を放棄することは、叔父の相続について“選択する権利”を放棄することと同じだからです。

上記をまとめるとこのようになります。
(1)叔父の相続を「放棄」 → 父の相続を「放棄」:可能
(2)叔父の相続を「放棄」 → 父の相続を「承認」:可能
(3)叔父の相続を「承認」 → 父の相続を「放棄」:不可能
(4)叔父の相続を「承認」 → 父の相続を「承認」:可能

相続放棄の熟慮機関について
相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内におこなう必要があります。
再転相続の熟慮期間については、伯父の債務を相続放棄しないまま父親が死亡した場合、その債務を引き継ぐことになった子どもはいつまでに相続放棄すれば返済を免れるのかを争われた昨年8月の最高裁判例により、「相続人が相続の承認または放棄をしないで死亡したときは、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する」とされています。
つまり、父の死亡の事実を知った日から3ヶ月後までということになります。

判決では、「再転相続で相続人になったことを知らないまま熟慮期間が始まるとすると、相続を認めるか放棄するかを選ぶ機会を保障する民法の規定の趣旨に反する」と指摘があり。
原告女性が再転相続人になったことを知った時点(通知が届いた日)を起算点にすべきだと結論づけられました。