遺産相続では、亡くなった人の遺言などにかかわらず、配偶者や子供に最低限の取り分を保障する「遺留分」という仕組みがある。生前に贈与した財産も遺留分の計算対象である。
遺産の相続分を親から生前に譲渡された子と、譲渡されなかった他の子との間で遺産の取り分が争われた訴訟の上告審判決が最高裁第2小法廷であり、相続分の譲渡が贈与にあたるとした今回の判断により、譲渡されなかった子にも最低限の取り分が保障される可能性が広がる。
今回のケースでは、亡父の遺産に対する相続分を母親が子に無償で譲渡。母親の死後、相続分の無償譲渡を受けた相続人に対して他の相続人が相続分の譲渡による遺留分の侵害を主張し、遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求めて上告審まで争われてきた事案である。
訴訟では、不動産や現金などの具体的な財産ではなく、受け取る遺産の割合を示す相続分を譲渡することが贈与にあたるかどうかが争点となった。
第2小法廷は判決理由で、共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たるとした。