2015年1月の税制改正でこれまで、「5000万円+相続人数×1000万円」だった相続税の基礎控除額が「3000万円+相続人数×600万円」におよそ4割引き下げられました。
また、税率の増加により相続財産の額が基礎控除額を超えた場合に課税される相続税の最高税率も55%まで引き上げられました。
この影響で10人に一人が相続税の申告の対象となるといわれており、東京23区ではなんと25%の人が相続税の申告をしなければならないとも考えられております。
そんな相続税対策として一つの判例をご紹介します☆
最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は2017年1月31日、「節税のための縁組でも直ちに無効になるとは言えない」とする初判断を示し、無効とした2審・東京高裁判決を破棄する判決を言い渡した。
事案は2013年に死亡した福島県の男性(当時82歳)の相続。
2012年に当時1歳だった長男の息子(孫)との養子縁組をしたため、この孫は男性の法定相続人となった。家族関係が悪化し、男性の長女と次女が養子縁組の無効を求めて提訴した。2審は、長男が税理士を連れて節税メリットを男性に説いたことから「相続税対策が中心で男性に孫と親子関係を創設する意思はなかった」とし、縁組を無効と判断した。
小法廷は「相続税節税という動機と養子縁組に必要な『縁組の意思』は併存し得る」と指摘。今回は「縁組の意思がないことをうかがわせる事情はない」と判断して縁組を有効とした。
では、養子縁組による相続税対策にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
この事案の場合、相続人は4名(男性の妻はすでに死亡している)で、基礎控除額は5400万円になる。もしこの養子縁組が無効と判断され、法定相続人が3名となった場合の基礎控除額は4800万円となる。
このように相続人が1名につき基礎控除額が600万円増えるというメリットがあります。
しかし、相続財産の1人あたりの法定相続分が減ることや、家族構成が変わることによって、今回の事案のようにトラブルになりかねません。
節税対策のために養子縁組をする際には、相続人全員の納得をしっかり得ることが重要でしょう。